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般若心経 私考 4

 

前回までのお話では、「五蘊(色、受、想、行、識)はみな空で、それは「無」ではなく、(言い切ってしまうならば・・・)物事のありのままの姿を正確に実感すると言うことに他ならず、それこそが苦しみから解放される術なのである」と観自在菩薩さまが明らかにされた言う事でした。

そして今回はその次の段・・・、

「舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是」

の文言に入るのですが、これを読み下しますと・・・、
「舎利子よ。色は空に異ならず、空は色に異ならず、色即ち空、空即ち色、受想行識もまたまた是の如し。」 となり、これまたキーワードが多すぎてとても難解な文章になってしまいます。

そこで、今までの勉強してきた内容を踏まえて、このキーワードを整理してみましょう。

舎利子:
お釈迦さまの一番弟子の舎利子、智慧第一の別名で有名な舎利弗 【しゃりほつ】の事。

:
物質的なものや現象化された出来事の全て。

:
ありのまま 物事の本質的な姿。

:
物事に対して、あるいは起こった事に対して沸起こる気持ち、感情  感受性。

:
先の受に基づいて沸き起こる思考 感想 判断 思うこと。

:
色による受、想、に基づく行い 行為。

:
色、受、想、行、等を包括するもの。意識の根元、 またはアイデンティティー。 


・・・やはり、まだまだ難解ですね。
そこで少々乱暴だとは思うんですが、思い切って意訳してみます。

「舎利子よ。世の中の全ての物質的な物や現象化された出来事は・・・、要するに、今、人々の見聞きする事や過去にしたであろう事、また仮に例えるなら、あなたの身体や所有物やそうでない物、他人の身体や所有物やそうでない物、全てを引っくるめて、・・・それらは既にそのままで、(まぁ言ってしまえば、ある意味)完璧なものなのです。

何故ならば、それらは無限の出来事の積み重ねによって生じ、それぞれの反応によって連鎖し続け、そしてまた無限の方向性をもって広がっていきます。 そこには大局的にも局所的にも隠された意図などあろうはずも無く、言うなれば「今」とはそう言った連続性の一断面に過ぎず、善であるだとか悪であるだとか、またその完成度や不完全さの度合い(完全さの度合い)を推し量るなどと言った概念は当てはめようもないことです。

繰り返し言うなれば、すべての事があるべくしてある現在の全てのものの姿、これこそが最も自然な姿であり、本質的にみれば、罪も徳も関係無いことでしょう。

人々の、起こった物事に対して沸き起こる感情も、それに対して始まる思考も、それに対する行動も、またそれら全てを呼び起こす肉体やアイデンティティーすらも例外ではなく、同じく反応の連鎖によって変化し、その記憶が蓄積され、また新たな反応を促す。まるで転がり続ける大法輪の如くにです。」

これで充分な説明になっているとはとうてい思えませんが、ここまで進めてみますと今回の文言はどうやら前回の「五蘊(色、受、想、行、識)はみな空」と言う内容をもう少し押し進めたものであると言う事がうかがえます。

ここで少し話が逸れてしまいますが、こういった話をしていますとどうしても「何故私たちはこのような事を勉強しなければならないのか?」と言った事をよく見失いがちになります。

確かに、現在、一般的に普通に生きている上でこんなことはあまり関係ないことかもしれません。しかし人間には、いざ苦しみに直面してしまうと、みな慌てふためいて、より一層苦しみを増大させてしまうと言う恐ろしい、しかもなかなか気づけない「落とし穴」が常に待ち受けている事をも忘れがちになってしまっています。

本来、仏教の究極の目的は、「人を襲うさまざまな苦しみから解放され、清々しく人生を全うする」と言う事に他なりません。

この般若心経では、それは、「苦しみを遠ざける」と言う解決策(本当はそんなものはないのですが・・・)ではなく、「苦しみの本質をしっかり見据えること」なのだと教えて下さってます。

で・・・ここで話を戻しますと、その手がかりが「五蘊(色、受、想、行、識)はみな空である」と言うことを、まずしっかりと把握することから始まると言う事なのです。

さて、先程の意訳に話を戻しますと、ここで中心に説かれている事は、やはり「五蘊はみな空である」と言う事をより詳しく説明しようと言うもので、その主旨は「今、(人が)直面している苦しみはその苦しみを生みだす価値観に基づいており、その価値観の基準となるものは、実はそれ自体の存在すら希薄なものである。」と理解(やはり、まだまだかなり理論的で難解な言葉ですね。しかし、理論とは本来至極単純なイメージの世界を、より正確に、また明確に伝えるための手段に他なりません。)していただければと思います。


次回へ続く

 

 

 

 

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