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般若心経 私考 6

 

今回は、前回よりの続きで、
「是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色聲香味觸法」
と言う文言に取りかかります。
読み下しでは、 「是くの故に、『空』の中には色も無く、受想行識も無く、眼耳鼻舌身意も無く、色聲香味觸法も無い。」となります。

意訳すると、
「今までに述べた事を踏まえて考えると、『空』と言う概念の中には、色(物質的なもの)も無く、受(感情 感受性)も、想(思考 感想 判断 思うこと)も、行(行い 行為)も、識(意識・アイデンティティー)も無く。 それらに情報を伝える感覚器官である目も、耳も、鼻も、舌も、触れたものを感じる神経も、それらを知覚する意識も無く。それに対する外部よりの刺激、光や色(いろ)も、さまざまな音も、臭いや香りも、味も、触感や熱い寒いといった感覚に影響する刺激全ても、またそれらを包括する出来事そのものさえ無いのです。」
となります。 いかがですか?

字面をそのまま理解することはそれほど難しい事ではないでしょう。でも、その意味を納得して理解するのはとても困難な作業ではないでしょうか。

誰がどう考えたとしても、眼も耳もあるし、光も見えるし、音も聞こえますよね。これを無いと言いきってしまうんですから、理解する事が困難なのは当然でしょう。

よく「それは有ると思っているだけで本当は無いのだ!」なんて宣う哲学者かぶれの方の言葉を耳にしますが、(ここでは空ではなく無ですから、本当に無いのですが・・・)では何が無いのかと言うと、その辺はなんだか曖昧な言葉でお茶を濁される方が多いようです。

しかしここでのテーマは、これを「出来うる限り正しく理解しましょう」という試みなので、そんな無責任な事ではすみません。 またまた理屈ぽい文章になってしまうかも知れませんが、このことを少し掘り下げて何が無いのかを考えてみることにします。 まず、色と言う言葉で表される光や色(いろ)について考えてみます。

通常、私たちが眼と言う感覚器官を使って外界の様子を認識するとき、それは赤いだとか青いと言った色(いろ)の情報や、明るい暗いと言った光の情報が主体となります。(但し眼は二つあるので遠近感や立体感の情報も含まれます。)本来ならばここでその光や色(いろ)についてその実体を深く掘り下げなければならないでのでしょうが、そこまでやってしまうとあまりにも煩雑になってしまうのでここでは省きましょう。・・・早い話が、光や色(いろ)といった外界の情報が私たちの眼と言う感覚器官を通して脳に情報を送りそれが五蘊と言うさまざまな反応を呼び起こすわけです。

そしてこれは他の、耳で聞く音、鼻で嗅ぐ臭い、舌で感じる味、等々も同じ事です。

しかし、これまで、この般若心経を読み進めて参りましたところ、この五蘊は空である・・・すなわち、それらには自性(自ら物事を発起する事)は無いと明らかにされています。

それはどういった事かと言う事を、もう一度振り返ってみますと、「私たちが常々沸き起こしている想いや考え、行動などは、私たち自身が自ら行っているように普段は思い感じているのですが、実は、それらはみな過去からの影響や刺激の記憶と、置かれている環境からの影響などより成り立っているものなのであり、言うなれば私たちは反応の連続性の中で生きているわけです。」と言うことになります。

であるならば、この文節の主意は、「私たちが全てであると思っている、眼で見た情報、耳で聞いた情報、鼻で嗅いだ情報、舌で味わった情報、肌で感じた情報、またそれらで構築される外界からの一切の情報さえも、全て一情報…、一つの情報にすぎない・・・」と理解するべきなのでしょう。

結局私たちはそんな情報の集大成に・・・それに気づく事もなく弄ばれているわけで、まるで波間に漂い揺られる一枚の木の葉みたいなものなのかもしれませんね。

これらのことから私たちに伺えることは、また今回の主題である「何が無いのか?」と言う疑問に対する答えは、「空と言う大いなる智慧の眼で見たとき、それらのことには自性は無く、また人生の本来の目的、仏教が目指す境地から見れば、あまり価値が無い。」と考えるべきでしょう。

まぁ余談ではありますが・・・(このお経の御教えの主旨はそうではないでしょうが・・・)そう考えてみますと、日々私たちに降りかかるさまざまな煩悩や災難も、少しではありますが気が楽になるように思います。

(誤解しないでいただきたいのですが般若心経と言うお経は世の中の真実の姿を説いたお経ではありますが、詳しく人の生き方まで説かれたものではありません。仏教の中では、それらあまり価値が無いと説かれていることすらも、自分の内に取り込んみ生きていく事の方が重要なのだ説かれている事を忘れないでください。)


 

次回へ続く

 

 

 

 

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